別居中にマンションを売るとき、名義・住宅ローン・税の特例で確認すること
別居が始まると、マンションには「住んでいる人」と「名義を持っている人」と「住宅ローンを払っている人」が別々になる時間が生まれます。離婚の話し合いがまとまる前に売るのか、まとまってから売るのか。家を出た側と残った側では、気になる点も違います。
この記事では、別居中のマンション売却について、条文と国税庁の記載で確かめられる範囲だけを整理します。税の記述は、国税庁タックスアンサーの令和8年4月1日現在の法令等にもとづく記載を、2026年10月4日に確認したものです。個別の事情への当てはめや、売るべきかどうかの結論を示すものではありません。
別居中のマンション売却で、先に分けておく4つのこと
- 売主になる人
- 単独名義なら名義人、共有なら共有者それぞれです。住んでいるかどうかではなく、所有者が誰かで決まります。誰が所有者として登記されているかは、登記事項証明書で確かめます。
- 住宅ローンと抵当権
- 抵当権が設定されているマンションは、借入先の金融機関が関わります。売却時の取扱いは契約と金融機関の判断によります。
- 売る時期
- 別居中に第三者へ売るのか、離婚に伴ってマンションそのものを渡すのかで、国税庁の説明するページが変わります。
- 税の特例の期限
- 家を出た名義人が3,000万円の特別控除の対象となるのは、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限られます。
この4つは、別居という時点に固有の事情で食い違いやすい部分です。同居中であれば、住んでいる人と名義人はたいてい同じ家にいます。別居中はそこが分かれるため、誰が何を決められるのか、いつまでに何が変わるのかを、ひとつずつ資料で確かめることになります。
別居中にマンションを売ることができるのは、所有者
民法第206条は「所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」と定めています。売却は処分に当たるため、売主になるのは所有者です。別居して家を出ていても、所有者であることは変わりません。逆に、住み続けている側が所有者でなければ、その人だけで売ることはできません。
共有名義の場合、それぞれが持っているのは持分です。マンション全体を売るには、共有者それぞれが自分の持分について売主になる必要があり、片方の判断だけでは全体を売ることができません。共有物に手を加える場面についても、民法第251条第1項は「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。」と定めており、共有物の変更にも他の共有者の同意が要るとされています。
別居中は、相手と連絡を取ること自体が負担になる場合があります。それでも、共有であれば売買契約や引渡しの場面で双方の関与が要ります。手元の記憶と登記簿の記載が違っていることもあるため、まず登記事項証明書で名義と持分を確かめるところから始めます。登記事項証明書は法務局で取得できます。
| 名義の形 | 売主になる人 | 別居中に確かめること |
|---|---|---|
| 自分の単独名義 | 自分。 | 家を出た側が名義人なら、住まなくなった日。残っている家族の退去時期。 |
| 相手の単独名義 | 相手。 | 自分が住んでいても、売るかどうかを決めるのは名義人。売却の予定と退去の時期を確かめる。 |
| 共有名義 | 共有者それぞれ。 | 持分の割合、売ることへの双方の意思、契約や引渡しのときの連絡方法。 |
名義がどちらにあるかと、離婚のときにどう分けるかは別の話です。名義と財産分与の関係は、財産分与の請求期間と共有名義を条文から整理した記事で扱っています。
条文の確認: e-Gov法令検索「民法(明治二十九年法律第八十九号)」第206条、第251条(2026年10月4日時点で表示される条文/確認日: 2026年10月4日)
住宅ローンが残るマンションは、抵当権の記載から確かめる
住宅ローンを借りて買ったマンションには、抵当権が設定されていることがあります。民法第369条第1項は「抵当権者は、債務者又は第三者が占有を移転しないで債務の担保に供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」と定めています。住み続けながら担保に入れている、という状態です。
抵当権が設定されているかどうかは、登記事項証明書で確かめられます。売るときに抵当権をどう扱うか、売却価格が残高に届かない場合にどうなるかは、金融機関との契約にもとづく事柄です。金融機関ごとに取扱いが異なるため、この記事では「こうすれば売れる」という書き方はしません。
別居中に確かめておきたいのは、借入の名義、連帯債務や連帯保証の有無、現在の残高、返済口座です。家を出た側が返済を続けているのか、残った側が払っているのかも、別居中は曖昧になりやすい点です。返済予定表や残高証明書で数字をそろえ、売却を考えていることを借入先へ伝える時期と手順は、借入先の金融機関に確認します。
条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第369条(確認日: 2026年10月4日)
家を出た側の3,000万円特別控除は、住まなくなった日から3年目の年末まで
マイホームを売って利益(譲渡所得)が出たときに、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。国税庁は、対象となる資産の1つとして「以前に住んでいた家屋(住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る場合に限ります。なお、その家屋は、住まなくなった日以後、どのような用途に使用してもかまいません。)」を挙げています。
別居で家を出た名義人にとっては、この「住まなくなった日」が起点になります。たとえば2026年10月に住まなくなった場合、3年を経過する日は2029年10月で、その日の属する年の12月31日、つまり2029年12月31日までに売る場合が対象です。
3年という数字だけを覚えていると、「家を出てから丸3年」と受け取りがちです。実際の区切りは年末なので、家を出た月によって、期限までの長さはおよそ3年から4年近くまで変わります。別居が長くなりそうなときほど、住まなくなった日がいつだったのかを記録しておく意味があります。
この特例には、ほかにも要件があります。売った年の前年・前々年に同じ特例を受けていないこと、買換えの特例など他の特例と重ねて受けていないこと、などです。所有期間の数え方や軽減税率との関係は、3,000万円の特別控除と軽減税率の要件を整理した記事にまとめています。この記事では、別居に関わる部分に絞ります。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年10月4日)/根拠条文: e-Gov法令検索「租税特別措置法」第35条第2項(確認日: 2026年10月4日)
名義人が別居で家を出て、家族が住み続けている場合
別居では、名義人が家を出て、配偶者や子どもがそのまま住み続ける形があります。この場合、名義人から見ると「以前に住んでいた家屋」になり、前の章の期限が関わってきます。
これとは別に、国税庁の法令解釈通達には、所有者本人が住んでいない家屋についての取扱いが置かれています。租税特別措置法関係通達の31の3-6は、次の要件をすべて満たすときは、その家屋を所有者にとっての居住用の家屋に当たるものとして取り扱うことができる、としています。同通達の35-6により、3,000万円の特別控除の判定もこれに準じて取り扱うとされています。
- 従来の居住所有者が、従来その所有者として住んでいた家屋であること。
- 親族の居住所有者が住まなくなった日以後、引き続き、所有者と生計を一にする親族が住んでいる家屋であること。
- 特例の未適用所有者が、住まなくなった日以後に、通達の挙げる居住用財産の特例の適用を受けていないこと。
- 現在の住まい所有者がいま住んでいる家屋が、所有者の所有する家屋でないこと。
通達にはただし書があり、「親族の居住」の要件を欠くに至った日から1年を経過した日以後に売った場合は、この取扱いの対象になりません。また、売った年分の確定申告書に、所有者の戸籍の附票の写しなどの書類を添付した場合に限り適用するとされています。
ここで判断が分かれるのは、別居中の配偶者や子どもが「生計を一にする親族」に当たるかどうかです。通達は、所得税基本通達2-47に定める親族としています。当たるかどうかは、生活費の負担などの事実をもとに個別に判断される事柄で、この記事では当てはめません。自分の場合にどちらの取扱いになるのかは、税務署または税理士に確認してください。
出典: 国税庁 法令解釈通達「措置法第31条の3《居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例》関係」31の3-6、同「措置法第35条《居住用財産の譲渡所得の特別控除》関係」35-6(確認日: 2026年10月4日)
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期限と並べる数字
売る時期を考える前に、いまの価格帯を置く
住宅ローンの残高も、税の計算も、売却価格の見込みがないと比べられません。別居中に売るか、離婚後に扱いを決めるかを話す前提として、価格帯を確認できます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む配偶者へ売る場合は、3,000万円の特別控除の対象にならない
別居中の話し合いでは、「住み続ける側が、出ていく側から買い取る」という案が出ることがあります。国税庁は、3,000万円の特別控除の要件として「親子や夫婦など「特別の関係がある人」に対して売ったものでないこと。」を挙げています。
根拠となる租税特別措置法第35条第2項第1号は、この特例の対象となる譲渡から「当該個人の配偶者」などに対するものを除いています。同法施行令は、第23条第2項と第20条の3第1項第1号で、特別の関係がある者として「当該個人の配偶者及び直系血族」を挙げています。条文は「配偶者」としており、離婚が成立するまでは配偶者に当たります。したがって、別居中に配偶者へ売った場合、この特例の対象にはなりません。国税庁は、特別の関係がある人には、生計を一にする親族や、家屋を売った後その家屋で同居する親族なども含まれるとしています。
第三者へ売る場合と、配偶者へ売る場合とでは、手続の相手だけでなく税の前提も違ってきます。買い取る案を検討するときは、売る側の税額がどう変わるかを、合意の前に税務署または税理士へ確認しておくと、後から前提が崩れずに済みます。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年10月4日)/根拠条文: e-Gov法令検索「租税特別措置法」第35条第2項第1号、e-Gov法令検索「租税特別措置法施行令」第23条第2項・第20条の3第1項第1号(確認日: 2026年10月4日)
離婚の前に売るか、離婚の後に分与するかで、税の説明が分かれる
マンションを第三者へ売って代金を分ける方法と、離婚に伴ってマンションそのものを相手へ渡す方法は、国税庁の説明では別のページに書かれています。
離婚に伴う財産分与として不動産を渡す場合について、国税庁は「財産分与が土地や建物などで行われたときは、分与した人に譲渡所得の課税が行われることになります。」「この場合、分与した時の土地や建物などの時価が譲渡所得の収入金額となります。」と説明しています。代金を受け取っていなくても、渡した側に譲渡所得の計算が生じる、という点は見落とされやすいところです。
受け取った側については、「次に、分与を受けた人は、分与を受けた日にその時の時価で土地や建物を取得したことになります。」とされています。将来そのマンションを売るときは、分与を受けた日をもとに、所有期間が長期か短期かを判定することになります。
贈与税については、国税庁は「離婚により相手方から財産をもらった場合、通常、贈与税がかかることはありません。これは、相手方から贈与を受けたものではなく、夫婦の財産関係の清算や離婚後の生活保障のための財産分与請求権に基づき給付を受けたものと考えられるからです。」としたうえで、贈与税がかかる場合を2つ挙げています。「分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合」と、「離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合」です。
この説明は、離婚により財産をもらった場合についてのものです。離婚が成立する前に名義や売却代金を相手へ移す場合が、同じ説明に当たるかどうかは、このページからは読み取れません。別居中に売って代金を分けるときは、分ける時期と方法を決める前に、税務署または税理士へ確認する事柄になります。
| 進め方 | 国税庁の説明で確かめられること | このページでは分からないこと |
|---|---|---|
| 別居中に第三者へ売る | 名義人に譲渡所得の計算が生じる。3,000万円の特別控除は要件を満たす場合に対象(No.3302)。 | 売却代金を離婚の前に分ける場合の扱い。 |
| 別居中に配偶者へ売る | 3,000万円の特別控除の対象にならない(No.3302)。 | 売買価格の決め方が税に与える影響。 |
| 離婚に伴いマンションを渡す | 渡した側に譲渡所得の課税。時価が収入金額(No.3114)。受け取った側は通常、贈与税がかからない(No.4414)。 | 渡した側が居住用財産の特例を使えるかどうか。 |
表の右の列は、国税庁のこの3つのページには書かれていない点です。書かれていないことを推測で埋めると、合意の前提が後から変わってしまいます。分からない点として残し、確認先へ持っていく項目にします。
なお、財産分与そのものは民法第768条に定められています。協議が調わないときに家庭裁判所へ協議に代わる処分を請求できる期間は、同条第2項のただし書で「ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。」とされています。この期間と経過措置については、財産分与の請求期間を扱った記事で整理しています。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3114「離婚して土地建物などを渡したとき」、No.4414「離婚して財産をもらったとき」(いずれも令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年10月4日)/条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第768条(確認日: 2026年10月4日)
別居した日と売った日を、日付の表にしておく
ここまで見てきた規定は、どれも日付を起点にしています。別居中は出来事が重なるため、後から思い出そうとすると曖昧になります。日付と、それを示す資料を並べておくと、確認先へ相談するときにそのまま使えます。
| 記録する日付 | 関わること | 手元に置く資料 |
|---|---|---|
| 名義人が家を出た日 | 3,000万円の特別控除の期限(3年を経過する日の属する年の12月31日)の起点。 | 住民票の異動の記録、引っ越しの領収書、転居先の賃貸借契約書。 |
| 売買契約を結んだ日 | 契約日の前日に、住民票の住所とマンションの所在地が異なる場合、確定申告で追加の書類が求められる。 | 売買契約書、戸籍の附票の写し。 |
| 売った年の1月1日 | 所有期間が5年を超えるかどうかの判定の基準日。 | 購入時の売買契約書、登記事項証明書。 |
| 離婚が成立した日 | 財産分与について家庭裁判所へ請求できる期間(離婚の時から五年)の起点。配偶者に当たるかどうかの境目。 | 戸籍の記載。 |
| マンションを分与した日 | 渡した側はその時の時価が収入金額になる。受け取った側はこの日に取得したことになる。 | 合意の書面、登記事項証明書。 |
国税庁は、売買契約日の前日に、売った人の住民票に記載されていた住所とマイホームの所在地とが異なる場合などには、戸籍の附票の写しなど、その人がそのマイホームに住んでいたことを明らかにする書類を併せて提出するよう案内しています。別居で住民票を移している名義人は、この場合に当たることがあります。
所有期間については、国税庁は、売った年の1月1日現在で5年を超えるかどうかで長期と短期を分けています。売った日そのものではなく1月1日で数えるため、年をまたぐかどうかで区分が変わることがあります。
出典: 国税庁 タックスアンサー No.3302「マイホームを売ったときの特例」、No.3208「長期譲渡所得の税額の計算」、No.3114「離婚して土地建物などを渡したとき」(いずれも令和8年4月1日現在法令等。確認日: 2026年10月4日)/条文の確認: e-Gov法令検索「民法」第768条(確認日: 2026年10月4日)
別居中のマンション売却で、確認先は目的ごとに分かれる
- 税の取扱い税務署、税理士。特例の対象になるか、離婚の前後でどう変わるかはここで確認します。
- 分け方と合意弁護士、家庭裁判所の手続。財産分与の対象や割合は個別の判断になります。
- 登記法務局の窓口、司法書士。名義と持分、抵当権の記載を確認します。
- 住宅ローン借入先の金融機関。売却時の取扱いは契約書を手元に置いて問い合わせます。
- 価格の見込み不動産会社。売却価格の見込みと、売り出しから引渡しまでの期間を確認します。
このサイトは情報を整理して伝える媒体で、個別の事情についての判断はできません。上の窓口は、それぞれ判断できる範囲が違います。どこに何を聞くのかを分けておくと、別居中の限られた連絡の機会を、決めることに使いやすくなります。
別居を始めた時点と財産分与の対象となる財産の範囲との関係は、条文に定めがなく、個別の事情にもとづく判断になります。弁護士へ確認する項目として分けておきます。
フォームへ進む前の、別居中のマンションメモ
- 名義登記上の所有者と持分。相手の単独名義か、共有か。
- 居住いま誰が住んでいるか。名義人が家を出た日はいつか。
- 借入残高、借入の名義、連帯債務や連帯保証の有無、返済している人。
- 時期住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の年末はいつか。
- 合意売ることについて相手の意思を確かめたか。連絡の方法は決まっているか。
空欄があっても構いません。どこが空欄なのかが分かっていると、次に取り寄せる資料と、聞く相手が決まります。価格の見込みを確認するときも、このメモがあると前提を伝えやすくなります。
同じカテゴリの記事との読み分け
- 離婚でマンションをどうする?売却査定の前に分けること売る案、住み続ける案、賃貸に出す案を、名義・ローン・価格から比べています。
- 財産分与を家庭裁判所へ請求できる期間は5年になった。共有のまま残すとどうなるか財産分与の期間と、共有のまま残す場合の規定を条文から整理しています。
- 同居期間別の離婚件数から、マンションで確認することを分ける同居期間の長短で、先に確認する項目がどう変わるかを統計から見ています。
- マイホームを売ったときの3,000万円の特別控除と軽減税率は、重ねて受けられる特例の要件と所有期間の数え方を、国税庁の記載に沿ってまとめています。
このコラムは、別居中という時点に絞って、名義・住宅ローン・税の特例の確認点を整理しました。カテゴリの一覧はT06 離婚 × マンションから辿れます。
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名義、残高、住まなくなった日がそろうと、価格の見込みを置く場所が決まります。売るかどうかを決める前の材料として確認できます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
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