旧耐震の住宅を売る前に、耐震化の統計と手元の書類を確認する
築40年を超える住宅を売ろうとすると、「旧耐震」という言葉に出会うことがあります。不安になる言葉ですが、旧耐震かどうかは建物の年代だけでは決まらず、耐震性があるかどうかも建物ごとに違います。まず、公的な統計で全体の姿を確かめ、次に自分の住宅について手元の書類で確かめられる事実を並べていきます。
この記事では、国土交通省の耐震化率の推計と、総務省統計局の住宅・土地統計調査の数字を使います。価格への影響や税制上の要件には触れません。どちらも個別の条件で変わり、一般論で断定できないためです。
「旧耐震」は、建築確認の日付で見分ける
一般に「新耐震基準」は、1981年(昭和56年)6月1日から施行された耐震基準を指し、現在も適用されています。それより前の基準で建てられた建物が、いわゆる「旧耐震」です。この施行日は、建築基準法施行令を改正した昭和55年政令第196号の附則(施行期日)に、昭和56年6月1日から施行すると定められています。
見分けるときの手がかりは、完成した年ではなく建築確認を受けた日付です。1981年6月以降に完成した建物でも、建築確認がそれより前なら旧耐震の基準で設計されている場合があります。反対に、完成年だけを見て旧耐震と決めつけることもできません。建築確認の日付は、確認済証(建築確認通知書)に記載されています。
国土交通省は耐震化の説明の中で、昭和56年以前の建物は旧耐震基準で建てられ、耐震性が不十分なものが多いという趣旨を示しています。ただし「多い」は全体の傾向であり、個々の建物の耐震性は耐震診断で確かめるものです。旧耐震であることと、耐震性が不十分であることは同じ意味ではありません。
なお、ここで示した施行日は、e-Gov法令検索に収録された建築基準法施行令の改正附則(昭和55年政令第196号)で確認したものです。補助として、住まいの相談窓口サイト「みんな安心住まいサポートセンター」(運営主体はこの記事では確認していません)の解説も参照しました。個々の建物が新耐震基準に当たるかどうかなど、法的な判断が必要な場面では、専門家の確認を得てください。
出典: e-Gov法令検索『建築基準法施行令』附則(昭和55年7月14日政令第196号)第1項(施行期日)(確認日: 2026年9月29日)、国土交通省『住宅・建築物の耐震化について』(確認日: 2026年9月29日)。補助出典(運営主体は未確認・法令原文の代わりにはしない): みんな安心住まいサポートセンター『<新耐震基準>を満たす住宅とはどういう意味ですか』(公表日の記載なし。確認日: 2026年9月29日)。いずれも要約
住宅の耐震化率は約90%。耐震性が不十分な住宅は約570万戸
国土交通省の推計では、令和5年の全国の住宅は約5,570万戸で、そのうち耐震性がある住宅は約5,000万戸、耐震化率は約90%です。耐震性が不十分な住宅は約570万戸と推計されています。
耐震性がある約5,000万戸の内訳を見ると、昭和56年以降に建てられた住宅が約4,390万戸、昭和55年以前に建てられたが耐震性がある住宅が約610万戸です。昭和55年以前の住宅にも、もともと耐震性があるもの、改修で耐震性を得たものが含まれています。年代だけで耐震性が決まらないことが、この内訳からも読み取れます。
同じ資料で耐震化率の推移を見ると、平成15年の約75%から、平成20年に約79%、平成25年に約82%、平成30年に約87%、令和5年に約90%へと上がってきました。資料には、平成30年時点で推計方法の改善を行った旨の注記があるため、前後の数字は厳密には同じ方法で比べたものではありません。
同じ資料では、令和17年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消するという目標も示されています。耐震化は国の政策としても進められている分野であり、売却を考える住宅が旧耐震であっても、それだけで特別な状況というわけではありません。
戸建てと共同住宅で、耐震化率は約85%と約96%に分かれる
同じ国土交通省の推計を建て方別に見ると、差がはっきりします。戸建て住宅は総戸数約2,930万戸に対して耐震性が不十分な住宅が約450万戸で、耐震化率は約85%です。共同住宅は総戸数約2,640万戸に対して耐震性が不十分な住宅が約110万戸で、耐震化率は約96%です。共同住宅では、昭和55年以前の建物で耐震性があるものが約260万戸と推計されています。
耐震性が不十分な約570万戸のうち、約450万戸が戸建て住宅です。旧耐震の戸建てを売る場合は、建物の耐震性について買い手から質問される場面を想定し、答えられる材料を先にそろえておくと話が進めやすくなります。
マンションなどの共同住宅では、耐震診断や耐震改修は建物全体を対象に管理組合が判断するのが一般的です。区分所有者が個人で調べられる範囲は限られるため、管理組合や管理会社に、診断の実施の有無と結果の扱いを確認することになります。
出典: 国土交通省『住宅の耐震化率(全国)』(令和5年の推計値。総務省の住宅・土地統計調査をもとに国土交通省が推計。資料に公表日の記載なし。確認日: 2026年9月29日)
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事実を並べたあとに
売却査定の入口で、築年と建物の状態を伝えて価格帯を見る
建築確認の日付、検査済証や耐震診断の記録の有無を手元で整理してから査定を依頼すると、説明が食い違いにくくなります。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの売却査定フォームへ進む2019年以降に耐震改修工事をした持ち家は、1980年以前の建築で2.6%
総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、2019年以降に耐震改修工事をした持ち家は全国で63万7千戸、持ち家全体の1.9%でした。建築の時期別に見ると、1980年以前に建てられた持ち家820万8千戸のうち、工事をしたのは21万6千戸で2.6%です。1981年以降に建てられた持ち家では1.6%でした。
建て方別の割合は、一戸建が2.3%、共同住宅が0.2%です。この差の理由は、統計からは分かりません。数字は、持ち家に住む世帯の回答をもとにしたものです。
ここで注意したいのは、統計の「1980年以前」は建築の時期による区分だという点です。旧耐震かどうかは建築確認の日付で決まるため、統計の区分と個々の住宅の判定は一致しません。1980年以前に建てられた住宅がすべて旧耐震というわけではなく、1981年に完成した住宅に旧耐震のものが含まれることもあります。国土交通省の推計の「昭和55年以前」「昭和56年以降」も年による区分で、同じ注意が必要です。
また、この統計は持ち家が対象で、賃貸住宅は含みません。直近5年ほどの工事に限った数字でもあるため、それより前に改修した住宅はここに数えられていません。1980年以前の持ち家で改修した割合が2.6%だからといって、残りがすべて改修の必要な住宅だと読むことはできません。
出典: 総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅の構造等に関する集計(確報集計)結果』(2025年1月29日公表。表2。確認日: 2026年9月29日)
売却前に手元で探す書類
旧耐震かどうか、耐震性がどう確かめられているかは、書類で説明できると話が早くなります。見つからない書類があっても、それだけで売却できないという意味ではありません。まず、何が手元にあり、何が無いかを分けておきます。
- 確認済証(建築確認通知書)建築確認を受けた日付が分かる書類です。旧耐震かどうかを見分ける最初の手がかりになります。
- 検査済証完了検査を受けたことを示す書類です。確認済証とあわせて保管されていることが多いため、同じ封筒や購入時の書類一式を探します。
- 耐震診断の報告書診断を受けたことがあれば、その報告書が建物の耐震性を説明する材料になります。診断の年月と実施者も控えておきます。
- 改修工事の記録耐震改修や大規模な修繕をした場合は、契約書、図面、工事写真、完了時の書類をまとめます。
- 管理組合の資料(マンション)建物全体の耐震診断の有無、結果、改修の計画は、管理組合や管理会社が持つ資料で確認します。
新耐震基準を満たすことを示す証明書(耐震基準適合証明書)は、指定確認検査機関、登録住宅性能評価機関、建築士などが発行できると案内されています。必要になるかどうか、どこに依頼するかは取引の条件で変わるため、仲介を担う宅地建物取引業者と相談して決めます。
書類が見つからないときに確認する窓口
確認済証や検査済証が見つからない場合でも、建築確認の記録が自治体に残っていることがあります。自治体の建築指導を担当する窓口で、台帳の記載事項を証明する書類を取得できる場合があると案内されています。ただし、残っている記録の範囲、手続、手数料は自治体によって異なります。申請の前に、住宅がある自治体の窓口で確認してください。
マンションの場合は、管理会社や管理組合に、竣工時の書類や耐震診断の記録が保管されていないかを問い合わせます。購入時の重要事項説明書にも、耐震診断の有無が記載されていることがあります。
書類が無い場合に建物がどう評価されるか、売主としてどこまで説明する必要があるかは、法律や契約に関わる判断です。この記事では断定できません。宅地建物取引業者や、必要に応じて建築士・弁護士に確認してください。
「旧耐震だから」で結論を急がず、事実を並べる
旧耐震という言葉だけで、売れない、価格が大きく下がると考えてしまいがちです。しかし、統計が示しているのは、昭和55年以前の住宅の中にも耐震性があるものが多数あること、耐震化率が上がり続けていることです。個々の住宅の条件は、統計ではなく書類と診断で確かめるものです。
- 日付建築確認の日付は、1981年6月1日の前か後か。
- 書類確認済証、検査済証、耐震診断の報告書、改修工事の記録のうち、手元にあるもの。
- 建物全体マンションなら、管理組合による耐震診断や改修の有無と、その資料の所在。
- 分からないこと書類が無い項目、確認中の項目を分けて書き出す。分からないことは分からないと伝える。
自治体によっては耐震診断や耐震改修の補助制度がありますが、有無、対象、金額は自治体ごとに異なります。売却前に改修するかどうかも含めて、自治体の窓口と、売却の相談先の両方で条件を確かめてから決めると、判断の材料がそろいます。
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仲介と買取を比べる
建物の状態に合わせて、買取の入口もあわせて確認する
改修の予定がない場合や書類がそろわない場合は、仲介での売却とあわせて買取の条件も見ておくと、比べる材料が増えます。ボタンからはリビンマッチ(リビン・テクノロジーズ株式会社)の外部サイトへ移動します。
リビンマッチの買取の入口を見るあわせて読む
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- 人の死の告知に関するガイドラインは誰に向けた整理か。「概ね3年」の範囲を確認する告知の考え方は、国土交通省のガイドラインを扱ったこちらの記事で整理しています。
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